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殺されるために生まれる命.1

子猫の画像|ねころび

13分に1頭

全国の保健所には毎日たくさんの犬や猫が運ばれてきます。
そして、その多くは産まれて間もない子猫です。
母親から離れてしまった小さな命は、運よく引き取り手が見つからない限り数日中に殺処分されます。
後にこの数字について詳しく説明をしますが、13分に1頭。
これが全国で殺処分されている犬や猫の数です。

「野良猫」や「野良犬」とは

こうした犬猫たちのことを「野良猫」や「野良犬」と呼びますが、もともと「野良猫」という猫はいないのです。辞書によると、のらねこ=飼い主がいない猫、のねこ=野生化した家猫とあります。
そもそも人が捨てたことが、この悲しい「殺処分」の全ての始まりなのです。

殺処分をゼロにするために

私たちは名古屋市から認可を得て「なごやかキャットサポーター」として活動する非営利の保護猫組織ですが、活動の根底は「殺処分を無くすこと」です。ただ動物が可愛いから保護したいわけでは(可愛くて仕方ありませんが)ないんです。保護するだけの活動では殺処分は無くなりません。「殺されるために生まれる命」この悲しい事態を無くす事こそが殺処分ゼロになると考え行動しています。

活動の基本軸は「TNR」

TNRは殺処分をゼロにするために最も効果的だと思われる活動の内容を表した頭文字です。

「T」はトラップ、まず野良猫を捕まえます。子猫を一匹見かけたら近くに兄弟猫や親猫もいます。

「N」はニューター、捕まえた猫ちゃんを手術をします。手術というのは避妊や去勢手術のことです。もちろん捕まえた時に他の病気やケガを負ってる猫ちゃんは治療も行います。

「R」はリターン、手術後の野良猫を返してあげます。これにはルールがあって必ず捕獲した場所と同じ場所に返します。猫ちゃんも見知らぬ土地に返されると、親猫や子猫と離れたままになるかもしれませんし、環境に適応できなくて餌場を失ったり、慣れない土地で事故に遭う可能性も増えてしまいます。

保護猫活動なのになぜリターンするのか

これは猫ちゃんたちの繁殖力に答えがあります。犬は生後1年で妊娠可能となり、年2回出産して、5〜10匹の赤ちゃんを産みます。これに対して猫ちゃんは、生後半年で妊娠可能となり、年に3回出産、4〜8匹の赤ちゃんを産むんです。

産まれた猫ちゃんの半数がメスとすると、その子猫たちも生後半年ほどで妊娠して出産、翌年には年に3回ほど出産するようになります。

猫の妊娠期間は2カ月です。お腹が大きくなったなと思ったら、あっという間に赤ちゃんを産むんです。

画像は二匹の猫ちゃんが4年後何匹に増えるかという有名なポスターですが、なんと二万匹を超えるんです。

保護をして飼主を探す。飼い主が見つかるまでは保護主が猫ちゃんたちの面倒を見る。それでは活動が間に合わないのです。そうこうしているうちに、どんどん赤ちゃんが産まれ、その子猫たちがまたどんどん赤ちゃんを産んで街は野良猫だらけになってしまいます。

なので、猫ちゃんたちの殺処分をゼロにするための最も効果的な活動が「TNR」というわけなんです。

手術するなんて可哀そうじゃない?

活動を行なっているとこういう声にも出会います。ですが、妊娠、出産の繰り返しは、母体にとって大きな負担となりますし、さらには病気や寿命を縮める原因ともなるんです。

青島の猫画像

写真は猫の楽園と呼ばれる青島のものですが、猫ちゃんが増え続けることで「楽園」とならず「地獄」となった島も多いのです。

香川県の女木島(めぎじま)の猫は、島外からの捨猫や観光客の餌やりなどで4、5年前から急激に増えました。島ではポスターなどで「猫に餌をやるな」と呼びかけました。でも、もちろん「餌をやるな」では何も解決しません。民家に入って食べ物をあさる猫も出ますし、餌を貰えなくなって犠牲となるのは弱いメス猫や子猫たちです。たくさん生まれても飢餓や共食いでバタバタと死んでいくんです。まさに地獄です。猫ちゃんたちは自分たちで繁殖を抑制することは出来ないのです。

そして、この島の出した答えは、島の猫すべてに手術をし、餌の時間と場所を固定することで、人と猫の共存をめざすということでした。

小さな島のこの大きな結論は、私たちの住む名古屋市にも通じるものだと思います。名古屋市の野良猫が住む環境はこの島よりもさらにひどいものだと思います。交通事故はもちろん、人からの虐待も多くあります。不幸な子猫が生まれないよう手術を施し一代限りの命を全うさせてあげること。これがもともとこの子たちを捨てた私たち人間の責任ではないでしょうか。

それぞれの正義

猫が好きな人、猫が嫌いな人、それぞれ自分の正義に従い行動していると思いますが、最初にお伝えした通り私たちは「ただの猫好き集団」ではありません。人間が猫を好きであろうが嫌いであろうが、そのために次々と小さな命が「殺処分」という形で亡くなっていくこの社会を止めたいのです。

猫好きが「野良猫に餌をあげまくる」のも、猫嫌いがそれを「張り紙等で抑止」するのも全ては知識の無さからくるものだと考えています。
餌やりには前述したように「餌の時間と場所を固定する」というルールがあるんです。

「猫の避妊去勢」や「野良猫への餌やり」以外にも「猫の室内飼育」は可哀そう、猫は外にいる方が幸せだという方もいますが、後述しますがそれも大きな間違いです。

92,000匹

猫を迷惑だと思う人、猫を可哀そうだと思う人、双方に正しい知識を持って頂いたうえで、人と猫が共存する素敵な社会を私たちは望んでいるのですが、人間の都合で、動物たちを捨てた結果がこの数字です。

これは、平成30年に全国で保健所に引き取られたワンちゃんと猫ちゃんの数(犬36,000 猫56,000)です。

悲しいことに15%にあたる14,000匹は飼主からの引き取りです。残りの78,000匹の中にも、最初から「野良」だったわけではなく「遺棄」されたペットも多くいると思います。

この 92,000匹の動物たちの内、12,000が飼主に無事返還、42,000が譲渡されます。
でも残りの 38,000もの命は殺処分されるんです。

最初にお伝えした13分に1頭という数字は、1年=525.600分、これを38,000で割った数字です。

この13分に1頭の殺処分を一刻も早くゼロにするために、私たちは日々 TNR活動を行なっています。

活動にはシェルターが不可欠

TNR活動はリターンするだけではありません。前述したように捕獲後、動物病院の判断などで、地域に戻せないほど病気の猫もいますし、親猫とはぐれて自活出来ない子猫たちも多いのです。

活動には猫ちゃんたちを一旦預かるシェルターの存在が不可欠です。

次回はそのシェルターのお話しをしたいと思います。

Posted in ねころびまがじん

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